抱っこで体を壊さないために。
子育て中の体は、想像以上に過酷な条件で働いています。
数kgある子どもを、1日に何十回も抱き上げる。
しかも、子どもは急に動きます。
腰をかがめた瞬間にのけぞることもあります。
抱き上げようとした瞬間に、別の方向へ手を伸ばすこともあります。
これが毎日続きます。
夜はまとまって眠れません。
痛みがあっても、仕事のように休むことはできません。
この条件で腰や手首が痛くなるのは、体が弱いからではありません。
負担が大きすぎるからです。
この記事では、抱っこや抱き上げによるダメージを少しでも減らす方法を紹介します。
すべてを完璧に実践する必要はありません。
今日からひとつ変えるだけでも、体への負担は変わります。
腰を守るポイントは「近づく」と「ひねらない」です。
まず見直したいのが、子どもを抱き上げる動作です。
避けたいのは、膝を伸ばしたまま、腰だけを曲げて持ち上げる姿勢です。
子どもが自分の体から離れているほど、腰には大きな負担がかかります。
抱き上げるときは、最初に子どもの近くまで移動してください。
できる範囲で膝と股関節を曲げます。
そして、子どもを体に引き寄せてから立ち上がります。
細かい姿勢を全部覚えなくても大丈夫です。
「遠くから持ち上げない」と覚えてください。
もうひとつ注意したいのが、ひねる動作です。
子どもを持ち上げながら、上半身だけで向きを変えると、腰への負担が増えます。
向きを変えるときは、腰だけをひねらず、足を踏み替えて体ごと動かしてください。
チャイルドシートに乗せるとき。
ベビーベッドから抱き上げるとき。
床から抱き上げて、そのまま後ろを向くとき。
このような場面では、特にひねりが入りやすくなります。
急いでいると毎回はできません。
それでも、思い出したときに足を動かすだけで違います。
いつも同じ側で抱く必要はありません。
無意識に、いつも同じ側で抱いていませんか。
利き手を空けるために、反対側の腕で抱く。
そして、骨盤を横に突き出し、その上に子どもを乗せる。
育児中によく見られる姿勢です。
この姿勢が続くと、片側の腰や股関節に負担が集まりやすくなります。
もちろん、左右を完全に均等にするのは無理です。
利き手もあります。
子どもの好みもあります。
家の動線によって、抱きやすい側も変わります。
そのため、完璧を目指す必要はありません。
1日に数回だけ、反対側で抱いてみる。
長時間の抱っこでは、抱っこ紐を使う。
立って抱くときは、片脚だけに体重を預け続けない。
このくらいから始めてください。
抱っこ紐を使っていても、子どもの位置が下がりすぎると、肩や腰への負担が増えます。
肩ベルトや腰ベルトが緩んでいないか、定期的に確認してください。
「抱っこ紐を使っているから大丈夫」とは限りません。
装着位置を少し直すだけで、体が楽になることがあります。
親指側の手首が痛む人へ。
育児中によく起きるのが、親指側の手首の痛みです。
ドケルバン病と呼ばれる状態が、その原因になっていることがあります。
赤ちゃんの頭や体を支えるとき、親指を大きく開いていませんか。
この姿勢を繰り返すと、親指を動かす腱の周辺に負担が集まりやすくなります。
対策は、親指だけで支えないことです。
できる範囲で、手のひらや前腕まで使って支えてください。
授乳クッションや丸めたタオルを使い、腕だけで赤ちゃんの重さを受けない工夫も役立ちます。
痛みが出ているときは、痛みを強くする動きを減らすことが基本です。
親指と手首を支える装具が使われることもあります。
ただし、装具の選び方や使い方は症状によって異なります。
痛みが強い場合や、長く続く場合は、整形外科などで相談してください。
痛みを我慢しながら使い続けることが、必ずしも早い回復につながるわけではありません。
尿もれは、我慢するしかない症状ではありません。
出産後に、くしゃみや咳で尿が漏れる。
下腹部に重さや下がるような感覚がある。
このような変化を経験する人は少なくありません。
でも、「産後にはよくあるから」と放置する必要はありません。
尿もれの種類によっては、骨盤底筋のトレーニングが第一選択として勧められています。
骨盤底筋は、膀胱や子宮、腸などを下から支える筋肉の集まりです。
トレーニングでは、締めることと同じくらい、ゆるめることも重要です。
息を止めず、お尻や太ももに必要以上の力を入れないようにします。
ただ、感覚が分かりにくい人もいます。
回数を増やすことよりも、正しく動かせているかを確認することが先です。
尿もれや下腹部の違和感が続く場合は、産婦人科や泌尿器科、骨盤底のリハビリテーションを扱う専門家に相談してください。
自分では締めているつもりでも、実際には力が入りすぎていたり、別の筋肉を使っていたりすることがあります。
専門家に確認してもらうことは、決して大げさではありません。
産後の運動は、急がなくて大丈夫です。
産後は「早く体形を戻さないと」と焦りやすい時期です。
SNSを開けば、産後すぐに運動を再開した人の投稿も流れてきます。
でも、回復の速さは人によって違います。
経腟分娩か帝王切開か。
出産時にどの程度の傷があったか。
妊娠前にどのくらい運動していたか。
睡眠が取れているか。
痛みや出血が残っているか。
条件が違えば、始められる運動も変わります。
そのため、ドローインや腹筋運動を一律に禁止する必要はありません。
反対に、誰でもすぐに始めてよいとも言えません。
痛みや違和感がなく、医療者から止められていない範囲で、呼吸や軽い運動から段階的に戻していくのが基本です。
動いたあとに痛みや出血が増える場合は、負荷を下げてください。
産後の健診前や、帝王切開・会陰の傷・骨盤底の症状がある場合は、運動の開始時期を医療者に確認してください。
誰かと比べる必要はありません。
体は、出産という大きな出来事から回復している途中です。
眠れていない日は、痛みも強く感じます。
育児中は、慢性的な睡眠不足になりやすいです。
そして、睡眠不足が続くと、痛みを強く感じることがあります。
以前なら気にならなかった負担が、つらく感じる。
小さな痛みが、一日中気になる。
そのような変化が起きても不思議ではありません。
「前はこれくらい平気だったのに」と、自分を責めないでください。
今は条件が違います。
だからこそ、頑張って耐えることよりも、負担そのものを減らすことが大切です。
抱っこ紐やベビーカーを使う。
家事を減らす。
家電に任せる。
一時保育やファミリーサポートを調べる。
パートナーとの分担を見直す。
頼れる家族や友人に、具体的なお願いをする。
すべてを自力で抱える必要はありません。
道具やサービスを使うことは、手抜きではありません。
あなたの体は、これからも子どもと暮らしていくための大切な土台です。
このような症状がある場合は、相談してください。
手足にしびれがある。
力が入りにくい。
痛みが強く、子どもを抱き上げられない。
尿もれや、下腹部が下がるような感覚が続いている。
出血や痛みが増えている。
発熱がある。
気分の落ち込みや強い不安が続いている。
日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は、我慢せず医療機関に相談してください。
「育児中だから仕方ない」で終わらせなくて大丈夫です。
あなたの体も、育児の一部です。
育児中の体の不調は、甘えでも、体力不足でもありません。
大きな負担が続いている体からのサインです。
全部を一度に変えなくても大丈夫です。
抱き上げる前に、一歩近づく。
向きを変えるときに、足を踏み替える。
反対側でも数分だけ抱いてみる。
クッションをひとつ使う。
誰かにひとつ頼る。
小さな変更でも、毎日繰り返せば大きな差になります。
子どもの体を守るのと同じように、自分の体も守ってください。
体を守ることは、育児を続けるための準備です。
この記事を読んで、抱っこでつらい場所が思い浮かんだ方は、返信で教えてください。
腰、手首、肩、首など、声が多かった悩みから、次の記事で具体的な対策を取り上げます。
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※この記事は、一般的な情報提供を目的としています。
個別の診断や治療に代わるものではありません。
痛みやしびれ、尿もれ、出血、気分の落ち込みなどが続く場合は、医療機関へ相談してください。


抱き上げるときに「子どもに近づく」「体ごと向きを変える」といった負担を減らす基本動作にすごく納得しました。完璧を目指してストレスを溜めるのではなく、1日に数回だけでも意識を変えたり道具を使ったりする現実的な提案は、渦中にいる親御さんにとって大きな支えになりますね。