骨は、運動で強くなります
「骨密度が低いと言われたので、カルシウムを摂っています」
これは大切な取り組みです。
ただ、骨を守るために必要なのは、カルシウムだけではありません。
骨を作る材料に加えて、骨に適切な刺激を与える必要があります。
つまり、食事と運動の両方が必要です。
骨は、何もしなくても強さを保てる組織ではありません。
使えば維持されやすくなり、使わなければ弱くなっていきます。
今日は、骨を守るために知っておきたい運動の考え方と、今日から始めやすい運動を紹介します。
骨は、毎日作り直されています
骨は、一度できたら変化しない硬い棒ではありません。
古くなった骨を壊し、新しい骨を作る作業が、体の中で繰り返されています。
この仕組みを「骨のリモデリング」と呼びます。
そして、骨の作り直しに影響する要素の一つが、骨にかかる力です。
立つ。
歩く。
階段を上る。
筋肉に力を入れる。
こうした動作をすると、骨にはごくわずかな変形が起こります。
この変形をストレインと呼びます。
骨は、適度なストレインを感知すると、かかっている負荷に適応しようとします。
負荷のかかる場所によって、鍛えられやすい骨も変わります。
腕だけを動かしても、脚の骨に十分な刺激が届くわけではありません。
守りたい骨に、無理のない範囲で負荷をかける必要があります。
骨に必要なのは「体重を支える運動」と「筋力運動」です
骨の健康を守る運動として、中心になるのは次の二つです。
①立った状態で体重を支える運動です。
②筋肉に抵抗をかける運動です。
ウォーキング、階段、ジョギング、ダンスなどは、脚で体重を支える運動です。
スクワットやかかと上げ、器具を使った筋力トレーニングでは、筋肉が骨を引っ張る力も刺激になります。
水泳や自転車も、心肺機能や筋力を保つためには良い運動です。
ただ、水中では浮力が働き、自転車ではサドルが体重を支えます。
そのため、骨への荷重という点では、歩行や筋力トレーニングより刺激が小さくなります。
水泳や自転車が中心の方は、体調に合わせて歩行や筋力運動を組み合わせてください。
ただし、衝撃が強ければ強いほどよいわけではありません。
年齢、骨密度、骨折歴、関節の状態によって、安全に行える運動は変わります。
骨粗鬆症がある方や背骨の圧迫骨折を経験した方は、ジャンプなどを自己判断で始めないでください。
高い負荷を使う運動で効果が示された研究もありますが、専門家の監督下で実施されたものです。
動かない状態が続くと、骨は弱くなります
骨にとって、刺激がない状態は大きな問題です。
長期間の安静や寝たきりでは、特に体重を支える脚の骨が弱くなります。
宇宙飛行士が無重力環境で骨量を失いやすいのも、骨に重力と荷重がかからないためです。
入院や手術のあとに筋力やバランス能力が落ちると、転倒の危険も高まります。
骨折を防ぐには、骨だけを見ていてはいけません。
骨の強さ。
脚の筋力。
体のバランス。
転ばないための環境。
このすべてを整える必要があります。
今日から始めやすい4つの運動
ここからは、特別な道具がなくても始めやすい運動を紹介します。
すべてを行う必要はありません。
安全に続けられるものを選んでください。
1.ウォーキング
まず始めやすいのは、歩くことです。
ウォーキングだけで大幅に骨密度が増えるとは限りません。
それでも、脚の筋力や持久力を保ち、活動量の低下を防ぐために役立ちます。
歩き慣れている方は、会話はできるものの、少し息が上がる程度の速さを目安にしてください。
最初から20分、30分と決める必要はありません。
10分程度から始め、体調に合わせて少しずつ増やしましょう。
買い物に歩いて行く。
一駅分だけ歩く。
エレベーターではなく階段を使う。
こうした日常の動作も、積み重ねれば運動になります。
2.かかと上げ
壁や椅子につかまり、ゆっくりとかかとを上げます。
つま先立ちになったら、かかとを下ろします。
ふくらはぎの筋力を鍛え、歩行を安定させるために役立つ運動です。
まずは10回から始めてください。
余裕が出てきたら、回数やセット数を少しずつ増やします。
元気な方は、かかとを軽く落とす動きを取り入れる方法もあります。
ただし、強く床へ打ちつける必要はありません。
骨粗鬆症、関節痛、腰痛、骨折歴がある方は、医師や理学療法士に確認してください。
3.片脚立ち
片脚立ちは、バランス能力を鍛える運動です。
転倒予防を考えるうえで、バランス運動は欠かせません。
机や壁など、すぐにつかまれる場所で行ってください。
片脚を少しだけ床から離し、10秒から30秒ほど保ちます。
左右を入れ替えて行います。
慣れている方は、1分を目標にしてもよいでしょう。
閉経後女性を対象に、片脚立ちを左右各1分、1日3回行った研究では、股関節の骨密度への効果が検討されています。
ただ、片脚立ちの大きな利点は、骨への負荷だけではありません。
バランスを保つ力を鍛え、転倒を防ぐことにもあります。
不安定な場所や、周囲につかまる物がない場所では行わないでください。
4.筋力トレーニング
骨を守るためには、筋肉も必要です。
特に鍛えたいのは、太もも、お尻、背中など、姿勢と歩行を支える筋肉です。
自宅で行うなら、椅子を使った立ち座り運動から始められます。
椅子に浅く座ります。
少し前に体を傾け、脚に力を入れて立ちます。
ゆっくりと椅子に戻ります。
まずは5回から10回程度で十分です。
膝や腰に痛みが出る場合は中止してください。
筋力運動は、最初から重い器具を使う必要はありません。
安全な姿勢を覚え、少しずつ負荷を上げることが大切です。
骨粗鬆症が怖いのは、骨折するまで気づきにくいからです
骨粗鬆症が進んでも、通常は骨そのものが痛むわけではありません。
自覚症状がないまま進み、骨折して初めて分かることがあります。
特に注意したいのは、脚の付け根、背骨、手首の骨折です。
脚の付け根を骨折すると、手術や入院が必要になることがあります。
その後、歩く力や生活の自立度に影響する場合もあります。
背骨の圧迫骨折は、転倒だけで起こるとは限りません。
骨が非常に弱くなっている場合は、物を持ち上げたときや、体を曲げたときに起こることもあります。
背中が丸くなった。
身長が以前より縮んだ。
急な腰痛や背中の痛みが出た。
このような変化がある場合は、年齢のせいだと決めつけず、医療機関へ相談してください。
一度骨折した方は、次の骨折を防ぐ対策が特に重要です。
カルシウムだけでは足りません
骨を守るには、運動と同時に栄養も整える必要があります。
カルシウムは、骨の重要な材料です。
牛乳や乳製品、小魚、大豆製品、小松菜などに含まれています。
ただし、カルシウムだけを摂れば骨が強くなるわけではありません。
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けます。
魚類やきのこ類に含まれ、日光を浴びることでも体内で作られます。
ビタミンKは、骨の形成に関わります。
納豆や緑黄色野菜などに含まれています。
たんぱく質も忘れてはいけません。
骨はカルシウムだけでできているわけではなく、コラーゲンなどのたんぱく質も重要な構成要素です。
魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などを、偏りなく食べてください。
ワルファリンを服用している方は、ビタミンKを多く含む食品について制限が必要な場合があります。
自己判断で食生活を変えず、主治医や薬剤師の指示に従ってください。
喫煙、過度の飲酒、極端な食事制限も、骨の健康にはマイナスです。
骨のために体重を落としすぎてしまっては、本末転倒です。
骨密度検査を検討してほしい方
骨粗鬆症は、自覚症状だけでは判断できません。
心配な方は、骨密度検査について医療機関や自治体へ相談してください。
特に検査を考えてほしいのは、次のような方です。
・閉経後の女性
・高齢の方
・過去に軽い転倒などで骨折したことがある方
・家族に大腿骨近位部骨折をした方がいる方
・体重が少ない方
・ステロイド薬を長期間使用している方
・若い頃から極端な食事制限を繰り返してきた方
・以前より身長が縮んだ方
・背中が丸くなったと感じる方
検査の必要性や受ける時期は、年齢や病歴によって異なります。
自治体の骨粗鬆症検診を利用できる場合もあるので、住んでいる地域の制度も確認してください。
運動だけで治療しようとしないでください
運動と食事は、骨粗鬆症の予防と治療を支える大切な柱です。
ただし、骨折リスクが高い方にとって、運動は薬の代わりにはなりません。
骨粗鬆症の薬には、骨折リスクを下げる効果が確認されているものがあります。
薬が必要だと判断された場合は、自己判断で中断しないでください。
「薬を飲みたくないので、運動だけで何とかしたい」
そう考える気持ちは分かります。
でも、すでに骨が弱くなっている場合は、運動だけでは追いつかないことがあります。
薬、栄養、運動、転倒予防を組み合わせる。
これが基本です。
今日から始めるなら、これだけで十分です
骨は、数日で強くなるものではありません。
数週間運動しただけでは、骨密度の数字に大きな変化が出ないこともあります。
だからこそ、無理な運動を一度だけ行うより、安全な運動を生活の中で続けることが大切です。
今日から始めるなら、次の三つで十分です。
・10分歩きます。
・椅子の立ち座りを5回行います。
・机につかまり、片脚立ちを左右10秒ずつ行います。
体力に余裕がある方は、少しずつ時間や回数を増やしてください。
痛みや強い疲れが出る運動は続けないでください。
骨は、良くなるときも悪くなるときも、静かに変化します。
痛みがないから大丈夫とは限りません。
数字で状態を知り、食事を整え、安全な刺激を続ける。
今日の10分が、1年後の骨と歩く力を支えます。
地味ですが、骨を守る方法は、この積み重ねです。
この記事を読んで、「今日から始める運動」を一つ決めた方は、コメントやメールへの返信で教えてください。
一人で続けるより、宣言したほうが習慣になりやすいです。
今後も、骨粗鬆症、転倒予防、関節や神経の症状について、生活の中で実践できる情報を配信します。
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※この記事は、一般的な情報提供を目的としています。
個別の診断や治療に代わるものではありません。
骨粗鬆症と診断されている方、過去に骨折した方、膝や腰に痛みがある方、治療中の病気がある方は、運動を始める前に主治医や理学療法士へ相談してください。


骨を強くするにはカルシウム等の栄養だけでなく、「体重を支える負荷(刺激)」を骨に直接与える必要があるという説明にすごく納得しました。ただ歩くだけでなく、骨にしっかり体重や筋肉の抵抗をかける意識を持つことが、日々の生活の中でも重要なポイントになりますね。