立ったまま靴下を履こうとして、よろけた。
玄関で靴を履くとき、気づけば壁に手をついている。
若いころは、何も考えずにできていたはずなのに。
こんな経験、ありませんか?
「バランスが落ちてきたのかな」
そう感じる人は少なくありません。
片足立ちは、単なる体力測定ではありません。
靴を履く。
ズボンに脚を通す。
段差をまたぐ。
階段を上る。
ぼくらは日常生活のなかで、思っている以上に片脚だけで体を支えています。
なので、片足立ちを見ると、今の体の状態が意外とよく分かります。
ただし、ここで一番伝えたいのは「何秒立てたか」ではありません。
秒数よりも大事なのは、どう立っているか。
そして、以前の自分と比べてどう変化しているかです。
今日は、この2つを見ていきます。
歩くという動作は、片脚立ちのくり返しです。
歩いているとき、ぼくらは左右の脚を交互に使って体を支えています。
そして、その片脚立ちを支えているのは脚の筋力だけではありません。
足の裏で床を感じる力。
目から入ってくる水平や垂直の情報。
耳の奥で、頭の傾きを感じる仕組み。
ぐらついた瞬間に、体を立て直す反応。
こうした働きが組み合わさって、片足で立つことができます。
なので、ぼくは片足立ちを見るとき、単純な「脚の強さ」だけを見ません。
体のいろいろな機能が、うまく連携しているかを見る動作だと考えています。
片足で10秒立てるかどうかを調べた研究もあります。
中高年の人たちを対象に、支えなしで10秒間の片足立ちができるかを調べ、その後の健康状態を追跡した研究です。
その研究では、10秒立てなかった人のほうが、その後の健康状態が良くなかったと報告されています。
ただ、ここは読み違えないでください。
「10秒立てなかったら寿命が縮む」
という話ではありません。
片足立ちには、筋肉、神経、目からの情報など、さまざまな要素が関わります。
なので、片足立ちが難しくなったこと自体が原因というより、体の変化を知らせるサインのひとつとして見るほうが自然です。
年齢が上がるにつれて、片足立ちが難しくなる人も増えていきます。
なので、うまく立てなかったからといって、必要以上に落ち込む必要はありません。
もうひとつ覚えておいてほしいのですが、片足立ちの秒数はけっこう変わります。
睡眠不足。
前の日の疲れ。
裸足か靴下か。
床の硬さ。
その日の緊張。
こうした条件だけでも変化します。
昨日10秒だったのに、今日は8秒だった。
それだけで「衰えた」と判断する必要はありません。
ぼくが見てほしいのは、左右差と長期的な変化です。
右は20秒立てるのに、左は5秒で崩れる。
以前は20秒立てていたのに、数か月かけて少しずつ短くなってきた。
こういう変化のほうが、単純な平均値より参考になります。
そして、秒数以上に見てほしいのが「立ち方」です。
足の裏の体重が、内側や外側に大きく偏っていないか。
上げている側のお尻が、すとんと落ちていないか。
支えている脚のほうへ、体ごと大きく倒していないか。
同じ10秒でも、立ち方は人によってかなり違います。
体を横に倒して固めることで、なんとか10秒持たせている人もいます。
その場合は「10秒立てたから問題なし」とは言い切れません。
もうひとつ。
「ふらつかない=バランスがいい」とも限りません。
静かに立っていることはできても、そこから手を伸ばしたり、振り向いたりすると一気に崩れる人もいます。
実生活では、じっと立っているだけではありません。
歩く。
振り向く。
物を取る。
段差を越える。
こうした動きのなかで、体勢を立て直す必要があります。
なので、ぼくはバランスを見るとき、
「静かに立てるか」
だけではなく、
「少し動いても戻ってこられるか」
も大事だと考えています。
ただし、次のような変化がある場合は、自己判断で運動量を増やす前に医療機関へ相談してください。
・左右で明らかな差がある
・ふらつきと一緒に、めまい、耳鳴り、吐き気が出る
・数か月のあいだに急にバランスが悪くなった
・しびれ、感覚の鈍さ、力の入りにくさがある
・すでに転倒した経験がある
特に、急な変化やめまいを伴う場合は、単なる筋力低下とは別の原因が隠れていることもあります。
では、どう練習するか。
特別なトレーニング時間を作らなくても大丈夫です。
おすすめは、歯みがきの時間です。
まず、壁やテーブルのそばに立ってください。
いつでも手をつける位置にします。
片脚を軽く浮かせて、少し先の一点を見ます。
足が床についたら、そこで終わりです。
左右2回ずつくらいで十分です。
最初は10秒。
慣れてきたら15秒。
それくらいから始めてください。
廊下を歩くときに、一直線の上を歩くように足を置く方法もあります。
そして、慣れてきたら少しだけ条件を変えます。
立ったまま頭を左右に動かしてみる。
安全を確保したうえで、少し不安定な場所に立ってみる。
ぐらつきを立て直す力は、実際に少しぐらつく状況を経験しないと使われません。
ただし、転倒しそうになるほど難しくする必要はありません。
安全が最優先です。
片足立ちは、道具もいりません。
10秒ほどあれば試せます。
それなのに、体のいろいろな働きを一度に見ることができます。
ただ、一回の数字だけを見て一喜一憂しないでください。
今日8秒だった。
昨日は12秒だった。
その数字だけでは、あまり意味はありません。
大事なのは、自分の左右差を知ること。
そして、数か月単位で自分の変化に気づくことです。
ということで、今日の歯みがきのときに、片脚を少し浮かせてみてください。
10秒立てるかより、
「右と左で違いはあるかな」
「体を横に倒していないかな」
そんなところを見てみてください。
そして、ひとつ聞かせてください。
あなたは、どんな場面で「最近ちょっとぐらつくな」と感じますか?
靴を履くとき。
ズボンを履くとき。
段差をまたぐとき。
振り向いたとき。
このメールに、そのまま返信して教えてください。
返信が多かった悩みは、次の記事で取り上げます。
※この記事は一般的な健康情報を紹介するもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状が長く続く場合や、強い痛み、腫れ、しびれなどがある場合は、医療機関にご相談ください。


単に「何秒立てたか」という記録にとらわれず、左右の差や体を無理に傾けて固めていないかといった「立ち方そのもの」を確かめる大切さにすごく納得しました。日によって変わる秒数に一喜一憂せず、足裏の感覚や目・耳の連携といった体全体のサインとして長期的に捉える見方は、自分の状態を落ち着いて見つめ直す上でとても分かりやすいです。
やますけさん、おはようございます!後でちょっとやってみます(笑)足腰問題が本格化の年ごろです💦